薬剤師国家試験 第104回 問212-213
60歳男性。喘息のため吸入ステロイド薬と共にテオフィリンを服用している。今回、右腰のまわりに痛みを伴う水疱が出現したので皮膚科を受診したところ、帯状疱疹と診断され、以下の処方箋を持って薬局を訪れた。
(処方1)
アシクロビル錠 400 mg 1 回 2 錠 ( 1 日 10 錠)
1 日 5 回 朝食後・昼食後・おやつどき・夕食後・就寝前 7 日分
面談により、この患者には、過去に口唇ヘルペスでバラシクロビル錠の服用の経験があることが分かった。また、営業職であるため忙しく、 1 日 5 回の服用を守ることは困難であると訴えた。そこで、皮膚科の医師に疑義照会したところ、以下の処方に変更となった。
(処方 2 )
バラシクロビル錠 500 mg 1 回 2 錠 ( 1 日 6 錠)
1 日 3 回 朝昼夕食後 7 日分
なお、この患者のクレアチニンクリアランスは 50 mL/min であった。
問 212(実務)
この患者に処方されたバラシクロビル錠に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 口唇ヘルペスと帯状疱疹に対する用法・用量・投与日数は異なる。
- テオフィリンと併用しても、テオフィリンの中毒症状が現れることはない。
- アシクロビルに比べて副作用が現れにくい。
- 腎機能が低下した時には、投与間隔の延長あるいは減量を伴った投与間隔の延長の措置を行う。
- 7 日間服用することで痛みは消失するが水泡は消失することはない。
解答 1,4
解説
1:〇
用法・用量・投与日数は異なる。
成分名 | 口唇ヘルペス(成人) | 帯状疱疹(成人) |
アシクロビル | 1000mg 分5 通常5日間 | 4000mg 分5 原則7日間 |
バラシクロビル | 1000mg 分2 通常5日間 | 3000mg 分3 原則7日間 |
ファムシクロビル | 750mg 分3 (再発性:2000mg 分2で投与可) 原則5日間 | 1500mg 分3 原則7日間 |
アメナメビル | 適応なし | 400mg 分1 原則7日間 |
2:×
暗記です。機序は不明だが、バラシクロビルの活性代謝物(アシクロビル)との併用により、テオフィリンの中毒症状があらわれることがある。(テオフィリン代謝阻害が考えられている)
3:×
バラシクロビルはアシクロビルの経口吸収性を高めた製剤であるため、アシクロビルに比べて副作用が出やすいことが予想される。
4:〇
バラシクロビルは腎排泄型薬剤のため、腎機能が低下した時は、投与間隔の延長や投与量の減量を考慮する。(アシクロビル、ファムシクロビルも同様)
※アメナメビルは腎機能に応じた投与量設定の必要ないとされている。
5:×
7日間服用することで水疱はほとんど消失するが、ウイルスによって傷つけられた神経により、持続した神経痛(帯状疱疹後神経痛)を引き起こすことがある。
問 213(物理・化学・生物)
バラシクロビルに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- アシクロビルの脂溶性を増大させることを意図して創出されたプロドラッグである。
- アシクロビルと L-バリンがエステル結合を介して連結した構造をもつ。
- 生体内に存在する酵素の作用により、波線部aにおいて結合が切断される。
- 生体内でbに示す酸素原子がリン酸化されることによって薬理活性を示す。
- 小腸のペプチドトランスポーターを介して吸収される。
解答 2,5
解説
1:×
脂溶性の増大ではなく、バリンエステルのプロドラッグとすることにより、小腸のペプチドトランスポーターを介した吸収がされやすくなることを意図して創出された。
2:〇
消化管から吸収された後、肝臓でバリンエステルの結合が切断(加水分解)されることで、活性代謝物のアシクロビルとなる。
3:×
エステル部位がエステラーゼにより加水分解され、L-バリンとアシクロビルが生成される。(⇔フィッシャーエステル化反応)
4:×
バリンエステルとアシクロビルのエステル結合が加水分解されて生成するヒドロキシ基がリン酸化されて薬理活性を示す。
5:〇
解説1を参照
実践問題の中でも比較的簡単な問題でしたね。
その調子で頑張りましょう♪
コメント